CARE INSURANCE COLUMN

令和9年度から介護保険はどう変わる?
自治体担当者が押さえておきたい制度改正のポイント

第10期介護保険事業(支援)計画、特定地域、保険者機能強化、 介護給付費財政調整交付金、ケアマネジャー制度など、 令和9年度以降の自治体実務に関係する主な制度改正について、 厚生労働省資料をもとに整理します。

令和9年度(2027年度)から、介護保険制度をめぐる さまざまな見直しが予定されています。

今回の制度改正では、第10期介護保険事業(支援)計画に向けた 中長期的なサービス見込量の推計、中山間・人口減少地域における 新たなサービス提供の仕組み、保険者機能の強化、 介護給付費財政調整交付金の見直し、 介護支援専門員(ケアマネジャー)の更新制廃止など、 自治体の介護保険行政に関係する重要な変更が示されています。

この記事では、厚生労働省が公表した 「令和8年度 全国介護保険担当課長会議」の資料をもとに、 令和9年度以降、自治体担当者が特に押さえておきたいポイントを整理します。

この記事を読む際の注意

本記事には、令和9年4月1日から施行されるものだけでなく、 令和9年度からデータ報告等が始まるもの、公布後一定期間以内に 施行されるもの、今後さらに詳細が定められるものも含まれています。 具体的な施行時期や運用については、今後の政省令・通知等も確認する必要があります。

この記事のポイント

  1. 令和9年度から介護保険制度はどう変わる?
  2. 第10期介護保険事業(支援)計画が始まる
  3. 中山間・人口減少地域に新しい仕組み
  4. 保険者機能強化は「成果」を重視する方向へ
  5. 介護給付費財政調整交付金の見直し
  6. ケアマネジャーの更新制が廃止へ
  7. 有料老人ホームをめぐる制度も見直し
  8. これからの自治体には「データを見て考える力」が重要
  9. 制度改正とケアプラン点検・介護給付適正化の関係
  10. まとめ

1.令和9年度から介護保険制度はどう変わる?

今回の制度改正を自治体の視点から見ると、 単に個別の制度が変わるというだけではありません。

大きな方向性として、 「地域の実情を踏まえた介護サービス提供体制の構築」と、 「データや成果を踏まえた保険者機能の強化」が、 より重要になっていると考えられます。

自治体担当者が特に押さえておきたいポイント

  • 第10期介護保険事業(支援)計画に向けた中長期的なサービス見込量の推計
  • 中山間・人口減少地域における「特定地域サービス」等の創設
  • 保険者機能強化推進交付金等の評価の見直し
  • 介護給付費財政調整交付金に関する年齢区分の見直し
  • 介護支援専門員の更新制廃止と研修の見直し
  • 有料老人ホームにおける利用者保護やケアマネジメントの適正化

これらは、それぞれ別々の制度改正に見えますが、 自治体に求められるのは、地域の状況を把握し、 必要な施策を検討し、その結果を確認していくという 一連の取組です。

2.第10期介護保険事業(支援)計画が始まる

令和9年度から始まる第10期介護保険事業(支援)計画では、 これまで以上に中長期的な視点が重要になります。

厚生労働省の資料では、基本的な事項として、 2040年度を含む中長期的なサービス見込量の推計 が示されています。

これは、単に現在の介護サービス利用状況を確認するだけではありません。

今後の人口構造や高齢者人口、介護サービスの需要、 地域のサービス提供体制などを踏まえ、 将来の地域に必要となる介護サービスの姿を考えていくことが重要になります。

地域によって介護サービスの課題は異なる

人口減少が進む地域と大都市部では、 今後の介護サービスを取り巻く環境が大きく異なります。

そのため、地域の特性を踏まえながら、 それぞれの地域におけるサービス提供体制を考えることが重要です。

「現在どれだけ必要か」だけではなく、
「2040年を見据えて、地域に何が必要になるのか」を考える。

自治体にとって重要になること

第10期計画では、 「過去の実績をそのまま将来に延ばす」だけではなく、 「地域が今後どう変化するのか」を踏まえて サービス需要を考えることが重要になります。

そのためには、介護給付や認定状況、 サービス利用状況などのデータを把握し、 地域の課題を整理することが欠かせません。

3.中山間・人口減少地域に新しい仕組み

人口減少や介護人材不足が進む地域では、 従来のサービス提供体制を維持することが 難しくなるケースがあります。

今回の改正では、中山間・人口減少地域などにおいて、 地域の実情に応じたサービス提供を可能とする 新しい仕組みとして、 「特定地域サービス」 が創設されます。

また、地域にサービス提供主体が少ない場合に、 市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる 「特定地域居宅サービス等事業」 も創設されます。

施行時期

これらは令和9年4月1日から施行される予定です。

地域の実情に応じた柔軟な対応が可能に

  • 人員配置基準等の柔軟化
  • 地域の実情に応じたサービス提供
  • 市町村によるサービス実施・委託
  • 地域のサービス提供体制を維持するための新たな選択肢

「特定地域になれば介護保険サービスがなくなる」という意味ではありません。

人口減少や人材不足が進む地域において、 必要な介護サービスをどのように維持していくのかを考えるための 新しい仕組みと捉えることが重要です。

なお、対象地域の基準や具体的な運用については、 今後さらに詳細が定められる部分があります。

4.保険者機能強化は「成果」を重視する方向へ

自治体の介護保険行政を考えるうえで、 もう一つ重要なのが保険者機能の強化です。

保険者機能強化推進交付金等については、 これまでの取組を踏まえて評価指標等の見直しが進められています。

今後は、単に「どのような事業を実施したか」だけではなく、 その取組によって地域にどのような変化・成果が生じたのか という視点が、より重要になっていくと考えられます。

1

データを確認する

2

地域の課題を把握する

3

施策を実施する

4

結果を確認する

5

次の施策につなげる

この循環は、介護保険事業計画だけでなく、 介護給付適正化やケアプラン点検にもつながる考え方です。

5.介護給付費財政調整交付金の見直し

介護給付費財政調整交付金についても見直しが予定されています。

現在の年齢区分は、

  • 65~74歳
  • 75~84歳
  • 85歳以上

の3区分ですが、見直し後は、 5歳刻みの7区分となる方向です。

区分 年齢
1 65~69歳
2 70~74歳
3 75~79歳
4 80~84歳
5 85~89歳
6 90~94歳
7 95歳以上

施行時期には注意が必要です

令和9年度から直ちに財政調整交付金の算定方法が 全面的に変わるということではありません。

厚生労働省の資料では、令和9年度からデータ報告を開始し、 その後の財政調整交付金の算定への反映が予定されています。

自治体にとっては、今後の制度変更を見据え、 必要となるデータを適切に把握・報告できる体制を 確認しておくことが重要になります。

6.ケアマネジャーの更新制が廃止へ

介護支援専門員(ケアマネジャー)については、 更新制を廃止する方向が示されています。

「更新制がなくなる=研修がなくなる」ということではありません。

今回の見直しでは、ケアマネジャーの研修についても、 専門職として必要な知識・技能を継続的に身につけるための 研修の在り方を見直す方向が示されています。

「資格更新のための研修」から、
「専門職としての継続的な資質向上」へ。

自治体にとっても、ケアマネジャーの研修や ケアマネジメントの質の確保について、 今後の制度変更を踏まえて考えていくことが重要になります。

施行日は一律に令和9年4月1日ではありません

更新制廃止については、公布後1年6か月以内に 政令で定める日から施行される予定とされています。 そのため、現時点では「令和9年4月1日から廃止」と 断定せず、今後の政令等を確認する必要があります。

7.有料老人ホームをめぐる制度も見直し

高齢者支援の分野では、有料老人ホームをめぐる制度についても 見直しが進められています。

特に重要なのが、 利用者保護ケアマネジメントの独立性 という視点です。

いわゆる「囲い込み」や、 利用者の状態等を十分に考慮しない過剰な介護サービス提供への 対応などが課題となっています。

自治体においても、介護サービスの利用状況を見る際には、

  • 「どのサービスが利用されているか」
  • 「なぜそのサービスが必要なのか」
  • 「利用者本人の生活課題や意向と整合しているのか」

という視点が重要になります。

これは、日常のケアプラン点検においても 重要な考え方です。

8.これからの自治体には「データを見て考える力」がより重要になる

今回の制度改正を全体として見ると、 自治体に求められる役割はさらに広がっています。

人口減少、介護人材不足、高齢者人口の変化、 地域ごとのサービス需要など、 自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。

そのため、 「以前と同じように事業を実施する」だけではなく、 「自分たちの地域では、現在何が起きているのか」 をデータから把握することが重要になります。

例えば、次のようなデータを組み合わせて見ることができます

  • 要介護認定者数の推移
  • 介護サービス利用状況
  • サービス種類別の給付状況
  • 地域別の利用状況
  • ケアプランの傾向
  • 介護サービス提供体制
  • 介護人材の状況

こうした情報を組み合わせることで、 地域の特徴や課題が見えてくる場合があります。

データを「集計して終わり」にせず、
地域の課題や施策につなげることが重要です。

9.制度改正とケアプラン点検・介護給付適正化の関係

ここまで見てきた制度改正は、 一見するとケアプラン点検とは別の話に見えるかもしれません。

しかし、実際には密接に関係しています。

これからの自治体に求められるのは、 「適正な給付になっているかを確認する」だけではなく、 「地域の実情や利用者の生活課題を踏まえて、 より良いケアマネジメントにつなげる」 という視点です。

ケアプラン点検で確認したい基本的な視点

  • アセスメントが適切に行われているか
  • 利用者の生活課題が整理されているか
  • 課題と目標がつながっているか
  • サービス内容が目標と整合しているか
  • モニタリング・評価が行われているか
  • 利用者本位のケアマネジメントになっているか

また、ケアプラン点検で得られた気づきを 個別のケアプランだけで終わらせず、 地域全体の傾向として捉えることで、 介護保険施策の検討につなげられる可能性があります。

1

地域のデータを分析する

2

地域の課題を把握する

3

ケアプラン点検を行う

4

点検から得られた気づきを整理する

5

介護保険施策につなげる

このような循環をつくることが、 これからの自治体にとって、より重要になっていくと考えられます。

10.まとめ|「制度対応」から「データに基づく地域づくり」へ

令和9年度以降の介護保険制度をめぐっては、 さまざまな制度改正が予定されています。

自治体担当者が押さえておきたい主なポイント

  • 第10期介護保険事業(支援)計画における中長期的なサービス見込量の推計
  • 中山間・人口減少地域における新しいサービス提供の仕組み
  • 保険者機能強化に向けた評価の見直し
  • 介護給付費財政調整交付金に関するデータ報告・年齢区分の見直し
  • ケアマネジャーの更新制廃止と研修の見直し
  • 有料老人ホームにおける利用者保護やケアマネジメントの適正化

これらを個別の制度変更として捉えるのではなく、 「地域の実情をデータで把握し、必要な施策を考え、 その効果を確認する」という大きな流れの中で捉えることが重要です。

介護保険制度を取り巻く環境が変化する中で、 自治体には、これまで以上に地域のデータを活用しながら、 介護サービスの提供体制やケアマネジメントの質を 考えていくことが求められます。

制度改正への対応だけではなく、
地域のデータやケアプラン点検から得られる気づきを、
今後の介護保険行政にどうつなげるか。

参考資料

本記事は、厚生労働省 「令和8年度 全国介護保険担当課長会議資料」 を主な参考資料として作成しています。

  • 厚生労働省「令和8年度 全国介護保険担当課長会議資料」
  • 資料1:総務課
  • 資料2:介護保険指導室
  • 資料3-1・資料3-2:介護保険計画課
  • 資料4:高齢者支援課
  • 資料5:認知症施策・地域介護推進課
  • 資料6:老人保健課

※制度改正の具体的な施行時期、対象、運用等については、 今後公布される政省令、通知、介護報酬改定等の情報も確認する必要があります。

自治体の介護保険行政をデータと実務から支援します

株式会社hoodでは、自治体を対象に、 ケアプラン点検、介護給付適正化、介護保険給付分析、 研修等を通じて、地域の実情に応じた介護保険施策の検討を支援しています。