令和8年個人情報保護法改正|自治体の介護データ活用・
ケアプラン点検への影響を解説
令和8年に改正された個人情報保護法について、自治体の介護保険業務、 ケアプラン点検、介護給付分析、AI・データ活用の観点から、 現時点で押さえておきたいポイントを解説します。
2026年(令和8年)7月、 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、 7月17日に公布されました。
その後、個人情報保護委員会では、改正法の円滑な施行に向けて、 政令・委員会規則・ガイドライン等の整備について段階的に検討が進められています。
令和8年9月16日には、第369回個人情報保護委員会において、 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①」 が決定されました。
今回の検討では、適正なデータ利活用の推進に加え、 16歳未満の者の個人情報や顔特徴データ等について、 改正法の施行に向けた政令・規則の具体化が進められています。
特に自治体にとっては、 「行政データの活用」「統計・分析」「AIの利用」と 「個人情報保護」をどのように両立させるか が重要なテーマとなります。
介護保険分野においても、介護給付データやケアプランに関する情報など、 個人情報を含むデータを扱う場面は多くあります。
改正法は令和8年7月17日に公布され、施行に向けた政令・委員会規則・ ガイドライン等の整備が進められています。令和8年10月には、 個人データの安全管理に関する注意喚起と、政令・規則の整備に向けた 基本的な考え方に関する追加資料も公表されました。
個人情報保護委員会では、令和8年8月26日に政令・規則等で定める事項の全体像を決定し、 9月9日には政令・規則・ガイドライン等の整備に関する今後の進め方を決定しました。 9月16日の基本的な考え方①に続き、10月1日には基本的な考え方②に関する資料が、 10月7日には大規模な漏えい等事案を踏まえた注意喚起資料、10月14日には\n 不適正利用等の防止や課徴金制度に関する資料が公表されています。
したがって、現時点では改正法の内容だけでなく、 今後公表される政令・委員会規則・ガイドライン等を含めて確認することが重要です。
この記事のポイント
1.令和8年個人情報保護法改正とは?
令和8年4月7日に改正法案が国会へ提出され、 7月10日に成立、7月17日に公布されました。
今回の改正の背景には、AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展があります。
個人情報を含むデータについては、適切な保護が必要である一方、 統計分析やAI開発など、社会全体でデータを活用するニーズも高まっています。
改正の基本的な方向性
「個人の権利利益を適切に保護しながら、データの適正な利活用を促進する」 という方向性が今回の改正の大きなポイントです。
なお、改正法は原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内で 政令により定められる日に施行される予定です。
現在は、施行に向けて政令・委員会規則・ガイドライン等の整備が進められています。
個人情報保護委員会は、令和8年8月26日に政令・規則等で定める事項の全体像を決定し、 9月9日には政令・規則・ガイドライン等の整備に関する今後の進め方を決定しています。
2.今回の改正で何が変わるのか
今回の改正では、さまざまな見直しが行われます。 自治体の実務に関係するものとして、特に注目したいポイントを整理します。
1.統計等の作成に利用する場合のデータ利活用を推進
今回の改正で特に注目されるのが、 統計情報等の作成を目的とした個人データの利用についてです。
改正法では、一定の要件の下で、 個人データ等の第三者提供や公開されている要配慮個人情報の取得について、 統計情報等の作成にのみ利用される場合には、 本人同意を不要とする仕組みが設けられます。
個人情報保護委員会の9月16日の資料では、 「統計作成等」には、統計作成等であると整理できるAI開発等も含まれることが示されています。
これは、個人情報を無制限に利用できるようにするものではありません。
改正法上の要件を満たすことが前提であり、 個人の権利利益を害するおそれが少ないものなど、 法律・政令・委員会規則等によって定められる範囲を確認する必要があります。
特に自治体が介護データを扱う場合には、 「統計・分析だから自由に利用できる」と考えるのではなく、 利用目的、対象データ、取扱方法、委託先等を整理して判断することが重要です。
2.取得の状況からみて本人の意思に反しないため、 本人の権利利益を害しないことが明らかな取扱い
令和8年9月16日の基本的な考え方①では、 個人情報の目的外利用、要配慮個人情報の取得、個人データの第三者提供について、 「取得の状況からみて本人の意思に反しないため本人の権利利益を害しないことが明らか」 である場合の具体的な範囲について検討されています。
個人情報保護委員会の資料では、例えば、 本人との契約のため必要やむを得ないことが明らかな場合などが示されています。
ただし、具体的な対象範囲については、 改正の趣旨を踏まえつつ、委員会規則等で定めることが想定されています。
この仕組みについても、自治体が保有する介護・福祉分野の個人情報を 自由に第三者提供できるという意味ではありません。
実際の取扱いについては、今後整備される政令・委員会規則・ガイドライン等を 確認した上で判断する必要があります。
3.子どもの個人情報について保護を強化
今回の改正では、16歳未満の者に関する個人情報についても見直しが行われます。
本人への通知や同意等について、 法定代理人を対象とすることを明確化するほか、 本人による利用停止等の請求についても一定の見直しが行われます。
また、16歳未満の者の個人情報を取り扱う際には、 その最善の利益を優先して考慮することが求められます。
4.顔特徴データ等の保護を強化
顔認識技術などに利用される顔特徴データ等についても、 保護が強化されます。
一定の場合において本人による利用停止等の請求をしやすくするほか、 オプトアウト制度に基づく第三者提供を禁止するなどの措置が講じられます。
5.個人情報漏えい時の対応を合理化
個人情報の漏えい等が発生した場合の本人通知についても、 一定の見直しが行われます。
本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合には、 本人への通知に関する規律が緩和されます。
漏えいした情報の内容や状況、 本人への影響などを踏まえて、 適切な対応を行うことが重要になります。
6.違法な個人情報利用に対する規律を強化
一方で、データ活用を促進するだけではありません。 違法な個人情報の取扱いに対する監督・罰則については、 強化される内容も含まれています。
- 個人情報データベース等の不正提供
- 加害目的による個人情報の提供
- 詐欺等による個人情報の不正取得
さらに、重大な違反行為によって財産的利益を得た場合等を対象として、 課徴金制度も導入されます。
「データを自由に使えるようになる」という改正ではありません。
適切なルールの下でデータ利活用を進めることが重要です。
3.9月16日の個人情報保護委員会で何が示されたのか
令和8年9月16日に開催された第369回個人情報保護委員会では、 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①」 が議題となりました。
今回の検討項目は、大きく分けて、 「適正なデータ利活用の推進」と 「リスクに適切に対応した規律」です。
9月16日に示された主な検討項目
- 目的外利用、要配慮個人情報取得及び第三者提供に関する規律
- 取得の状況からみて本人の意思に反しないため、 本人の権利利益を害しないことが明らかな取扱い
- 16歳未満の者の個人情報の取扱い
- 顔特徴データ等に関する規律
重要なのは、9月16日の資料が、 改正法のすべての論点について最終的な実務ルールを示したものではないことです。
個人情報保護委員会の資料でも、今回の検討項目以外については、 今後の委員会において順次検討するとされています。
令和8年9月16日時点では、 改正法の施行に向けた政令・委員会規則等の具体化が進んでいる段階です。
したがって、自治体の実務担当者は、 「改正法が公布された」という段階だけでなく、 今後公表される政令・規則・ガイドライン等を継続的に確認する必要があります。
改正法成立
7月17日公布
政令・規則等の全体像
9月16日基本的考え方①
今後さらに具体化
4.自治体の介護保険業務にも関係する改正
ここからは、自治体の介護保険業務という視点で考えてみます。
介護保険行政では、日々さまざまなデータが蓄積されています。
- 要介護認定に関する情報
- 介護サービスの利用状況
- 介護給付費
- ケアプランに関する情報
- 住宅・家族等の生活状況
- 医療・介護に関する情報
- 地域別のサービス利用状況
これらの情報は、介護保険事業の運営や給付適正化、 地域の課題把握などに活用できる重要な行政資源です。
一方で、個人に関する情報を含むため、 適切な管理と利用が不可欠です。
介護保険分野で重要になる視点
「個人情報を守ること」と「行政データを活用すること」を どのように両立させるか
今回の法改正を契機として、 自治体が保有するデータを適切に分析し、 政策形成や行政サービスの改善につなげる視点が より重要になります。
5.ケアプラン点検への影響
ケアプラン点検では、利用者本人の生活状況や心身の状態、 家族状況、サービス利用状況など、 さまざまな情報を確認します。
そのため、ケアプラン点検においても、 「どの情報を、何の目的で利用するのか」 を明確にすることが重要です。
- 点検対象者の選定
- ケアプランの内容確認
- サービス利用状況の分析
- 給付状況との比較
- 地域別・事業所別の傾向分析
- 点検結果を踏まえた研修・支援
特に、個別の利用者情報を扱う業務と、 複数のデータを集計・分析して傾向を把握する業務では、 データの性質や取扱いを分けて考えることが重要です。
改正法によってデータ利活用に関する一定の見直しが行われるとしても、 個別のケアプランや利用者情報を、 目的やルールを問わず自由に分析・提供できるようになるわけではありません。
ケアプラン点検では、点検の目的、利用する情報、 データの範囲、委託先、保管方法、分析後の取扱いなどを 具体的に整理しておくことが重要です。
個別事例の確認
集計・分析
地域課題の把握
施策・支援
質の向上
6.介護給付分析では「データをどう活用するか」が重要
介護給付分析では、介護給付費やサービス利用状況などのデータを分析し、 地域の状況や課題を把握することができます。
- どのサービスの利用が多いのか
- 地域によってどのような違いがあるのか
- 要介護度とサービス利用の関係はどうなっているのか
- 給付費の増加要因は何か
- 今後どのような課題が予想されるのか
しかし、データ分析は単に「数字を見る」ことが目的ではありません。
介護給付分析
↓
地域課題の把握
↓
給付適正化
↓
ケアマネジメント支援
↓
質の向上
分析結果を具体的な施策につなげていくことが重要です。
その際にも、個人単位の情報を扱うのか、 集計・統計化された情報を扱うのかを整理し、 それぞれのデータの取扱いを適切に設計することが求められます。
7.AIを活用した介護データ分析にも注目
今回の改正では、統計作成等と整理できるAI開発等についても、 一定の条件の下でデータ利活用を促進する方向が示されています。
今後、自治体においてもAIを利用したデータ分析や業務支援が さらに進む可能性があります。
- 介護給付データの傾向分析
- 地域別の課題抽出
- ケアプラン点検対象の検討
- 介護サービス利用状況の分析
- 研修テーマの抽出
- 自治体内部の政策検討
ただし、 「AIにデータを入れれば分析できる」 という考え方では不十分です。
AI・データ活用で確認したいこと
どのデータを使うのか
↓
何の目的で使うのか
↓
誰が使うのか
↓
どのように管理するのか
↓
分析結果をどのように利用するのか
個人情報をAIサービスに入力する場合には、 AIサービスの仕様、保存場所、入力した情報の利用方法、 学習への利用の有無、委託関係などを確認する必要があります。
AIだから問題があるということではなく、 個人情報をどのような仕組みで取り扱うのか を確認することが重要です。
8.自治体が今から整理しておきたい5つのポイント
令和8年改正法の施行に向けて、 今後、政令・規則・ガイドライン等の具体的な内容を確認する必要があります。
1.何のためにデータを利用するのか
「分析するため」だけではなく、 何を明らかにし、その結果を何に活用するのか まで整理することが重要です。
2.個人単位の情報と集計・分析データを区別する
個人のケアプラン等を確認する場合と、 地域全体の傾向を分析する場合では、 データの性質や取扱いを分けて考える必要があります。
3.外部委託時の役割と責任を明確にする
自治体が外部事業者へデータ分析やケアプラン点検等を委託する場合には、 以下のような点を明確にしておくことが重要です。
- どのデータを渡すのか
- 何の目的で利用するのか
- 保管方法はどうするのか
- 再利用を認めるのか
- 分析後のデータをどう扱うのか
- 委託先にどのような安全管理を求めるのか
4.AIを利用する場合のルールを整理する
AIに個人情報を入力する場合には、 AIサービスの仕様やデータの保存・利用方法等も確認する必要があります。
AIだから問題があるということではなく、 個人情報をどのような仕組みで取り扱うのか を確認することが重要です。
5.分析結果を「政策」にどうつなげるか
最も重要なのはここです。 データ分析は、それ自体が目的ではありません。
介護給付分析
地域課題の把握
ケアプラン点検
フィードバック
研修・支援・質の向上
9.個人情報保護とデータ活用は「対立するもの」ではない
介護保険分野では、個人情報を扱う機会が多いため、 「個人情報だから分析できない」と考えてしまうことがあります。
しかし、重要なのは、 「できるか、できないか」だけではありません。
重要なのは「適切な方法で活用できるか」という視点
「どのような目的で、どのようなデータを、 どのような方法で利用すれば、 適切に活用できるのか」
今回の改正は、個人情報の保護を維持しながら、 統計・分析・AI等を含む適正なデータ利活用を進める方向を含んでいます。
一方で、9月16日の個人情報保護委員会の検討でも、 適正なデータ利活用と同時に、 子どもの個人情報や顔特徴データ等についてリスクに対応した規律が検討されています。
自治体においても、今後は「情報を保管する」だけではなく、 「適切に活用して行政サービスの改善につなげる」という視点と、 「適切に管理する」という視点の両方が重要になります。
制度改正とケアプラン点検・介護給付適正化の関係
ケアプラン点検で得られた気づきを、 個別のケアプランだけで終わらせず、 地域全体の傾向として捉えることで、 介護保険施策の検討につなげられる可能性があります。
地域のデータを分析する
地域の課題を把握する
ケアプラン点検を行う
気づきを整理する
介護保険施策につなげる
10.令和8年10月公表資料から考える安全管理とデータ活用
令和8年10月、個人情報保護委員会から、個人データの安全管理に関する注意喚起と、 改正個人情報保護法に係る政令・規則の整備に向けた基本的な考え方に関する資料が公表されました。 これらは、自治体が介護データを分析・活用する場合や、ケアプラン点検等を外部委託する場合にも、 データの利用目的、安全管理、委託先の管理、保存・消去のルールを確認するうえで参考になります。
1.大規模な漏えい等事案を踏まえた安全管理の確認
令和8年10月7日公表の資料では、大規模な漏えい等事案を踏まえ、 個人データの安全管理措置を確認し、必要な対策を講じることが注意喚起されています。 介護給付実績、認定情報、ケアプラン等を取り扱う場合も、 データの保管・受け渡し・分析・廃棄までの各段階で、適切な管理が行われているかを確認することが重要です。
自治体・委託事業者が確認したい事項
- 個人データを閲覧・利用できる職員や担当者が、業務上必要な範囲に限定されているか
- 利用者ID、パスワード、アクセス権限等が適切に管理されているか
- データの送受信や保管について、漏えい・紛失・不正アクセスを防ぐ対策が講じられているか
- 事故・漏えい等が発生した場合の連絡先、報告手順、対応体制が整理されているか
- 利用目的や法令上の保存義務等を踏まえ、不要となったデータの保存・消去が適切に管理されているか
安全管理措置は、技術的な対策だけでなく、組織的・人的・物理的な対策も含めて検討する必要があります。 また、具体的な対策は、取り扱うデータの性質・量や、漏えい時に本人が受ける影響などのリスクに応じて、 必要かつ適切なものを講じることが重要です。
2.統計作成等の特例と介護データの分析・活用
令和8年10月1日に公表された「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について②」では、 改正法の施行に向けた制度の具体化に関する考え方が示されています。 関連する論点には、統計情報等の作成、委託先における個人データ等の適正な取扱い、 漏えい等報告・本人通知義務などがあります。
改正法では、一定の要件の下で、統計情報等の作成を目的とする個人データの取扱いについて、 本人の同意を得ない取得・提供等に関する特例が設けられています。 ただし、これは個人データを自由に利用・共有できるという意味ではありません。 対象となる行為、目的、必要な措置等について、法律や今後整備される政令・委員会規則等を確認する必要があります。
- 分析の目的と、利用するデータの種類・範囲が明確になっているか
- 個人を識別する必要がない分析では、集計等によって個人が特定されにくい形で活用できないか検討しているか
- 個人単位の情報を取り扱う場合、利用目的、取扱いの根拠、提供の可否、必要な手続を確認しているか
- 委託業務で個人データを取り扱う場合、契約条件、安全管理措置、委託先の監督方法が整理されているか
- 分析結果を公表・共有する際、個人が不必要に特定される形になっていないか
地域全体のサービス利用傾向や給付状況を把握する分析と、個別のケアプランの内容を確認する点検とでは、 必要なデータや取扱い上の留意点が異なります。 目的に応じてデータの範囲や利用方法を整理し、個人情報保護のルールに沿って分析・活用することが大切です。
3.外部委託時のデータ管理と役割分担
ケアプラン点検や介護給付分析を外部に委託する場合は、業務内容だけでなく、 委託先が個人データをどのように取り扱うかについても、あらかじめ確認しておく必要があります。
委託契約や業務手順で確認したい項目
- 委託業務で取り扱うデータの種類・範囲と利用目的
- データの受け渡し方法、保管場所、アクセスできる担当者
- 再委託の有無と、再委託がある場合の管理方法
- 安全管理措置の内容と、実施状況を確認する方法
- 事故・漏えい等が発生した場合の報告・対応体制
- 契約終了後のデータ返却・消去と、その確認方法
これらは、委託業務の性質や自治体の規程、契約条件等に応じて整理する必要があります。 委託先に業務を任せる場合でも、データの取扱いに関する役割分担や確認方法を曖昧にしないことが重要です。
4.制度の具体化に向けて最新資料を確認する
令和8年10月1日の資料は、政令・規則の整備に向けた基本的な考え方を示すものであり、 すべての実務上の要件や手続が確定したことを意味するものではありません。 今後公表される政令・委員会規則・ガイドライン等を確認し、実際の取扱いに反映する必要があります。
データ活用の目的を明確にする。
安全管理と委託先の管理を徹底する。
そして、最新の法令・規則等に基づいて運用する。
11.10月14日公表資料で示された不適正利用の防止と課徴金制度
令和8年10月14日の第372回個人情報保護委員会では、 「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について③」が決定されました。 今回の資料は、主に「不適正利用等の防止」と「規律遵守の実効性確保」を扱っています。 9月・10月初旬の資料に続き、改正法の施行に向けた具体化が進められていることを示すものです。
1.連絡可能個人関連情報の不適正利用・不正取得を禁止
資料では、住所、電話番号、メールアドレス、Cookie ID等のように、 特定の個人に連絡等を行うことができる情報を含む「連絡可能個人関連情報」について、 不適正な利用や不正な手段による取得を禁止する規律が整理されています。 個人情報に該当しない場合でも、他の情報との照合や本人への連絡を通じて、 プライバシーや財産などの権利利益が侵害されるおそれがあるためです。
この考え方は、個人情報に該当するかどうかだけで取扱いのリスクを判断せず、 情報を組み合わせることで個人を特定できるか、本人への働きかけに利用できるか、 どのような不利益につながるかを考慮する必要があることを示しています。
介護給付データや認定情報等を取り扱う際にも、識別子や連絡先等を他の情報と結び付けることで、 個人が特定されたり、本人への働きかけに利用されたりする可能性があります。 データの取得経緯、利用目的、組み合わせる情報、アクセス権限を確認し、 業務に必要な範囲で取り扱うことが重要です。
これは介護データの通常の集計・分析が一律に禁止されるという意味ではありません。 実際の取扱いは、適用される法令や規則、利用目的、情報の性質等を踏まえて判断する必要があります。
2.オプトアウト制度による第三者提供の確認を強化
オプトアウト制度は、一定の要件の下で、本人の同意を得ずに個人データを第三者提供できる仕組みです。 10月14日の資料では、制度を悪用した個人データの流通や、いわゆる「闇名簿」への利用を防ぐ観点から、 オプトアウト制度に基づいて個人データを提供する事業者に対し、 提供先の身元(氏名・名称、住所、代表者氏名等)と利用目的を事前に確認する方向が示されています。
また、確認事項を偽ることも禁止し、違反した場合には過料の対象とする考え方が示されています。 提供先の確認方法や記録義務等については、政令・規則の整備に向けた検討が進められています。
外部委託・データ提供の場面で確認したいこと
- 提供先の名称や所在、担当・責任主体を確認できているか
- データの利用目的が具体的に説明され、業務上の目的と整合しているか
- 提供するデータの項目・範囲が必要最小限になっているか
- 提供・受領の経緯や確認内容を記録し、後から確認できるか
- 委託契約等で、目的外利用や無断での第三者提供を防ぐ措置が定められているか
なお、自治体から業務委託先へ介護データを渡す行為すべてが、 オプトアウト制度による第三者提供に当たるということではありません。 個別のデータの流れと法的な位置付けを確認したうえで、適用されるルールに沿って対応する必要があります。
3.重大な違反行為に対する課徴金制度
資料では、重大な個人情報保護法違反によって得られた財産的利益等を剥奪し、 違反行為を抑止するための課徴金制度についても、政令・規則の整備に向けた考え方が示されています。 対象となる行為は、不適正利用、違法な取得、第三者提供の制限違反、統計作成等の特例に関する違反など、 個人の権利利益への深刻な侵害につながる可能性が高い類型を中心に整理されています。
資料では、対象となる事案について、違反行為の性質や事業者の認識・注意義務、 個人の権利利益への侵害、大規模性等を踏まえて限定する考え方が示されています。 大規模事案については、対象行為に係る本人の数について1,000人を基準とする考え方も記載されています。 課徴金の具体的な適用要件や算定等は、今後の政令・規則・ガイドライン等の確認が必要です。
個人データを扱う業務では、法令・契約・業務手順を守ることに加え、 目的外利用や不適切な第三者提供を防止できる管理体制を整えることが重要です。 委託先の選定、取扱担当者の限定、アクセス記録、データの返却・消去、 事故発生時の報告手順などを、業務の実態に合わせて点検しておくことが望まれます。
4.10月14日資料の位置付けと今後の確認
10月14日の資料は、改正法の施行に向けた政令・規則の整備についての「基本的な考え方」です。 すべての具体的な運用要件が確定したことを意味するものではなく、 ガイドライン等についても今後、個人情報保護委員会で順次検討するとされています。
自治体が介護給付分析やケアプラン点検を行う場合は、改正法の概要だけで判断せず、 今後公表される政令・委員会規則・ガイドライン等を確認し、 個人情報の取得・提供・委託・保管・消去の各段階における取扱いを必要に応じて見直すことが重要です。
個人情報に該当するかだけでなく、
どのように使われ、誰に渡り、どのような影響を生むかまで確認する。
それが、適切なデータ活用と不適正利用の防止につながります。
12.まとめ|これからの自治体には「データを守る力」と「活用する力」の両方が必要
令和8年個人情報保護法改正では、 AIやデータ利活用の進展を踏まえ、 統計等の作成を目的とするデータ利用について一定の見直しが行われる一方、 子どもの個人情報や顔特徴データ等の保護、 違法な個人情報利用への対応についても見直しが行われます。
また、令和8年9月16日の個人情報保護委員会では、 改正法の施行に向けた政令・規則の整備について、 「適正なデータ利活用の推進」や 「リスクに適切に対応した規律」に関する基本的な考え方が示されました。
自治体の介護保険分野で重要になること
- 介護給付データやケアプランに関する情報を適切に管理する
- 個人情報を扱う業務と集計・分析業務を整理する
- データを地域の課題把握や給付適正化につなげる
- AI等を利用する場合のデータ取扱いを確認する
- 外部委託する場合のデータの取扱いや役割・責任を明確にする
- 分析結果をケアマネジメントの質の向上につなげる
自治体の介護保険分野においても、 介護給付データやケアプランに関する情報などを適切に管理しながら、 地域の課題把握や給付適正化、 ケアマネジメントの質の向上につなげていくことが重要です。
これからの自治体には、 「個人情報を適切に守る力」 と同時に、 「保有するデータを適切に分析・活用する力」 の両方が求められます。
個人情報を守る。
データを適切に活用する。
そして、地域の介護・福祉行政につなげる。
令和8年10月26日現在、政令・委員会規則・ガイドライン等の整備は 引き続き進められています。
今後、個人情報保護委員会から追加の資料や具体的なルールが示される可能性があるため、 自治体における実際の個人情報の取扱いについては、 最新の法令・政令・委員会規則・ガイドライン等を確認することが重要です。
参考資料
本記事は、個人情報保護委員会が公表している 令和8年改正個人情報保護法に関する資料を主な参考資料として作成しています。
- 個人情報保護委員会 「令和8年 改正個人情報保護法について」
- 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」
- 第369回個人情報保護委員会 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①」
- 個人情報保護委員会「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について②」/令和8年10月1日
- 個人情報保護委員会「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について」/令和8年10月7日
- 個人情報保護委員会「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について③(不適正利用等防止、規律遵守の実効性確保のための規律)」/令和8年10月14日
個人情報保護委員会|令和8年 改正個人情報保護法について →
個人情報保護委員会|9月16日「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について①」PDF →
個人情報保護委員会|10月1日「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について②」PDF →
個人情報保護委員会|10月7日「大規模な漏えい等事案を踏まえた対応について」PDF →
個人情報保護委員会|10月14日「政令・規則の整備に向けた基本的な考え方について③」PDF →
※本記事は2026年10月26日時点で公表されている情報をもとに作成しています。 今後、政令・委員会規則・ガイドライン等の整備により、 実務上の取扱いが具体化・変更される可能性があります。 実際の個人情報の取扱いについては、 最新の法令・政令・委員会規則・ガイドライン等をご確認ください。
自治体の介護保険行政をデータと実務から支援します
株式会社hoodでは、自治体を対象として、 ケアプラン点検、介護給付適正化、介護保険給付分析、 研修会、福祉計画・調査等を通じ、 介護・福祉行政の実務を支援しています。
介護保険データの分析やケアプラン点検を 単独の業務として捉えるのではなく、 データから地域の課題を把握し、 具体的な施策やケアマネジメントの質の向上につなげること を重視しています。