令和9年度から介護保険はどう変わる?
自治体担当者が押さえておきたい制度改正のポイント
第10期介護保険事業(支援)計画、特定地域、保険者機能強化、 介護給付費財政調整交付金、ケアマネジャー制度など、 令和9年度以降の自治体実務に関係する主な制度改正について、 厚生労働省資料をもとに整理します。
令和9年度(2027年度)から、介護保険制度をめぐる さまざまな見直しが予定されています。
今回の制度改正では、第10期介護保険事業(支援)計画に向けた 中長期的なサービス見込量の推計、中山間・人口減少地域における 新たなサービス提供の仕組み、保険者機能の強化、 介護給付費財政調整交付金の見直し、 介護支援専門員(ケアマネジャー)の更新制廃止など、 自治体の介護保険行政に関係する重要な変更が示されています。
この記事では、厚生労働省が公表した 「令和8年度 全国介護保険担当課長会議」の資料をもとに、 令和9年度以降、自治体担当者が特に押さえておきたいポイントを整理します。
本記事には、令和9年4月1日から施行されるものだけでなく、 令和9年度からデータ報告等が始まるもの、公布後一定期間以内に 施行されるもの、今後さらに詳細が定められるものも含まれています。 具体的な施行時期や運用については、今後の政省令・通知等も確認する必要があります。
この記事のポイント
1.令和9年度から介護保険制度はどう変わる?
今回の制度改正を自治体の視点から見ると、 単に個別の制度が変わるというだけではありません。
大きな方向性として、 「地域の実情を踏まえた介護サービス提供体制の構築」と、 「データや成果を踏まえた保険者機能の強化」が、 より重要になっていると考えられます。
自治体担当者が特に押さえておきたいポイント
- 第10期介護保険事業(支援)計画に向けた中長期的なサービス見込量の推計
- 中山間・人口減少地域における「特定地域サービス」等の創設
- 保険者機能強化推進交付金等の評価の見直し
- 介護給付費財政調整交付金に関する年齢区分の見直し
- 介護支援専門員の更新制廃止と研修の見直し
- 有料老人ホームにおける利用者保護やケアマネジメントの適正化
これらは、それぞれ別々の制度改正に見えますが、 自治体に求められるのは、地域の状況を把握し、 必要な施策を検討し、その結果を確認していくという 一連の取組です。
2.第10期介護保険事業(支援)計画が始まる
令和9年度から始まる第10期介護保険事業(支援)計画では、 これまで以上に中長期的な視点が重要になります。
厚生労働省の資料では、基本的な事項として、 2040年度を含む中長期的なサービス見込量の推計 が示されています。
これは、単に現在の介護サービス利用状況を確認するだけではありません。
今後の人口構造や高齢者人口、介護サービスの需要、 地域のサービス提供体制などを踏まえ、 将来の地域に必要となる介護サービスの姿を考えていくことが重要になります。
地域によって介護サービスの課題は異なる
人口減少が進む地域と大都市部では、 今後の介護サービスを取り巻く環境が大きく異なります。
そのため、地域の特性を踏まえながら、 それぞれの地域におけるサービス提供体制を考えることが重要です。
「現在どれだけ必要か」だけではなく、
「2040年を見据えて、地域に何が必要になるのか」を考える。
自治体にとって重要になること
第10期計画では、 「過去の実績をそのまま将来に延ばす」だけではなく、 「地域が今後どう変化するのか」を踏まえて サービス需要を考えることが重要になります。
そのためには、介護給付や認定状況、 サービス利用状況などのデータを把握し、 地域の課題を整理することが欠かせません。
3.中山間・人口減少地域に新しい仕組み
人口減少や介護人材不足が進む地域では、 従来のサービス提供体制を維持することが 難しくなるケースがあります。
今回の改正では、中山間・人口減少地域などにおいて、 地域の実情に応じたサービス提供を可能とする 新しい仕組みとして、 「特定地域サービス」 が創設されます。
また、地域にサービス提供主体が少ない場合に、 市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる 「特定地域居宅サービス等事業」 も創設されます。
これらは令和9年4月1日から施行される予定です。
地域の実情に応じた柔軟な対応が可能に
- 人員配置基準等の柔軟化
- 地域の実情に応じたサービス提供
- 市町村によるサービス実施・委託
- 地域のサービス提供体制を維持するための新たな選択肢
「特定地域になれば介護保険サービスがなくなる」という意味ではありません。
人口減少や人材不足が進む地域において、 必要な介護サービスをどのように維持していくのかを考えるための 新しい仕組みと捉えることが重要です。
なお、対象地域の基準や具体的な運用については、 今後さらに詳細が定められる部分があります。
4.保険者機能強化は「成果」を重視する方向へ
自治体の介護保険行政を考えるうえで、 もう一つ重要なのが保険者機能の強化です。
保険者機能強化推進交付金等については、 これまでの取組を踏まえて評価指標等の見直しが進められています。
今後は、単に「どのような事業を実施したか」だけではなく、 その取組によって地域にどのような変化・成果が生じたのか という視点が、より重要になっていくと考えられます。
データを確認する
地域の課題を把握する
施策を実施する
結果を確認する
次の施策につなげる
この循環は、介護保険事業計画だけでなく、 介護給付適正化やケアプラン点検にもつながる考え方です。
5.介護給付費財政調整交付金の見直し
介護給付費財政調整交付金についても見直しが予定されています。
現在の年齢区分は、
- 65~74歳
- 75~84歳
- 85歳以上
の3区分ですが、見直し後は、 5歳刻みの7区分となる方向です。
| 区分 | 年齢 |
|---|---|
| 1 | 65~69歳 |
| 2 | 70~74歳 |
| 3 | 75~79歳 |
| 4 | 80~84歳 |
| 5 | 85~89歳 |
| 6 | 90~94歳 |
| 7 | 95歳以上 |
施行時期には注意が必要です
令和9年度から直ちに財政調整交付金の算定方法が 全面的に変わるということではありません。
厚生労働省の資料では、令和9年度からデータ報告を開始し、 その後の財政調整交付金の算定への反映が予定されています。
自治体にとっては、今後の制度変更を見据え、 必要となるデータを適切に把握・報告できる体制を 確認しておくことが重要になります。
6.ケアマネジャーの更新制が廃止へ
介護支援専門員(ケアマネジャー)については、 更新制を廃止する方向が示されています。
「更新制がなくなる=研修がなくなる」ということではありません。
今回の見直しでは、ケアマネジャーの研修についても、 専門職として必要な知識・技能を継続的に身につけるための 研修の在り方を見直す方向が示されています。
「資格更新のための研修」から、
「専門職としての継続的な資質向上」へ。
自治体にとっても、ケアマネジャーの研修や ケアマネジメントの質の確保について、 今後の制度変更を踏まえて考えていくことが重要になります。
更新制廃止については、公布後1年6か月以内に 政令で定める日から施行される予定とされています。 そのため、現時点では「令和9年4月1日から廃止」と 断定せず、今後の政令等を確認する必要があります。
7.有料老人ホームをめぐる制度も見直し
高齢者支援の分野では、有料老人ホームをめぐる制度についても 見直しが進められています。
特に重要なのが、 利用者保護や ケアマネジメントの独立性 という視点です。
いわゆる「囲い込み」や、 利用者の状態等を十分に考慮しない過剰な介護サービス提供への 対応などが課題となっています。
自治体においても、介護サービスの利用状況を見る際には、
- 「どのサービスが利用されているか」
- 「なぜそのサービスが必要なのか」
- 「利用者本人の生活課題や意向と整合しているのか」
という視点が重要になります。
これは、日常のケアプラン点検においても 重要な考え方です。
8.これからの自治体には「データを見て考える力」がより重要になる
今回の制度改正を全体として見ると、 自治体に求められる役割はさらに広がっています。
人口減少、介護人材不足、高齢者人口の変化、 地域ごとのサービス需要など、 自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。
そのため、 「以前と同じように事業を実施する」だけではなく、 「自分たちの地域では、現在何が起きているのか」 をデータから把握することが重要になります。
例えば、次のようなデータを組み合わせて見ることができます
- 要介護認定者数の推移
- 介護サービス利用状況
- サービス種類別の給付状況
- 地域別の利用状況
- ケアプランの傾向
- 介護サービス提供体制
- 介護人材の状況
こうした情報を組み合わせることで、 地域の特徴や課題が見えてくる場合があります。
データを「集計して終わり」にせず、
地域の課題や施策につなげることが重要です。
9.制度改正とケアプラン点検・介護給付適正化の関係
ここまで見てきた制度改正は、 一見するとケアプラン点検とは別の話に見えるかもしれません。
しかし、実際には密接に関係しています。
これからの自治体に求められるのは、 「適正な給付になっているかを確認する」だけではなく、 「地域の実情や利用者の生活課題を踏まえて、 より良いケアマネジメントにつなげる」 という視点です。
ケアプラン点検で確認したい基本的な視点
- アセスメントが適切に行われているか
- 利用者の生活課題が整理されているか
- 課題と目標がつながっているか
- サービス内容が目標と整合しているか
- モニタリング・評価が行われているか
- 利用者本位のケアマネジメントになっているか
また、ケアプラン点検で得られた気づきを 個別のケアプランだけで終わらせず、 地域全体の傾向として捉えることで、 介護保険施策の検討につなげられる可能性があります。
地域のデータを分析する
地域の課題を把握する
ケアプラン点検を行う
点検から得られた気づきを整理する
介護保険施策につなげる
このような循環をつくることが、 これからの自治体にとって、より重要になっていくと考えられます。
10.令和9年度制度改正の最新動向|令和8年10月更新
令和9年度(2027年度)の介護保険制度改正に向けて、厚生労働省では 社会保障審議会介護保険部会に加え、介護報酬の具体的な検討を行う 介護給付費分科会でも議論が進んでいます。 ここでは、令和8年10月26日の介護保険部会に加え、 10月28日の介護給付費分科会で公表された資料も踏まえ、 自治体担当者や居宅介護支援事業所に関係する動きを整理します。
以下は、令和8年10月26日の介護保険部会と、10月28日の介護給付費分科会の公表資料に基づく整理です。 審議中の論点、対応案、調査速報値を含み、すべてが決定済みの制度変更という意味ではありません。 正式な取扱いは、今後の審議資料、告示、通知等で確認する必要があります。
1.令和9年度介護報酬改定に向け、居宅介護支援も検討対象に
令和8年10月19日に開催された第271回社会保障審議会介護給付費分科会では、 令和9年度介護報酬改定に向けた各サービスの検討が行われ、 議題には居宅介護支援も含まれています。 同日の公表資料には、居宅介護支援に関する資料が掲載されています。
ケアマネジメントに関わる自治体・事業所にとっては、 今後の審議でどのような課題や見直しの方向性が示されるか、 継続して確認したい動きです。 ただし、資料が公表された段階で、個別の報酬項目や算定要件が 決定したと解釈することはできません。
確認しておきたいポイント
- 居宅介護支援に関する検討資料の内容
- 今後の審議で示される論点や見直しの方向性
- 正式決定後の告示・通知・Q&Aと施行時期
厚生労働省「第271回社会保障審議会介護給付費分科会 資料」
2.介護保険部会では、給付と負担・要介護認定などを継続審議
令和8年9月18日の第136回社会保障審議会介護保険部会では、 第1号保険料の在り方や、制度の持続可能性を確保するための給付と負担が議題となりました。 また、介護情報基盤、介護サービス事業者の経営情報の調査・分析、 介護給付適正化に向けた取組、介護事業者の連携強化についても報告事項として取り上げられています。
これらの議題は、保険料や給付の在り方だけでなく、 自治体が介護保険事業を運営する際の情報活用や、 給付状況を把握して施策につなげる取組にも関係します。 自治体担当者は、審議内容と自地域の計画・事業の関係を整理しながら、 今後公表される資料を確認することが重要です。
厚生労働省「第136回社会保障審議会介護保険部会 資料」 / 同・議事録
3.10月26日の第137回介護保険部会で公表された資料
令和8年10月26日に開催された第137回社会保障審議会介護保険部会では、 「持続可能性の確保(給付と負担)」「要介護認定」が議題となり、 「介護支援専門員法定研修の見直しの検討状況」も報告されました。 厚生労働省は、給付と負担、要介護認定、ケアマネジャーの法定研修に関する資料を公表しています。
以下は、令和8年10月26日に公表された審議資料の内容を整理したものです。 「論点」「見直し案」「今後検討する事項」を含むため、確定した制度内容と区別して確認してください。 実施時期や具体的な取扱いは、今後の法令・通知等を確認する必要があります。
4.給付と負担:「一定以上所得」の判断基準などを継続検討
資料1「持続可能性の確保(給付と負担)について」では、介護保険制度の持続可能性を確保する観点から、 世代間・世代内の公平性、現役世代の保険料負担への配慮、負担能力に応じた負担の在り方が整理されています。 介護費用や保険料が増加している一方で、必要なサービスを確保することも重要な前提とされています。
主な検討事項は、次のとおりです。
- 介護サービス利用時の「一定以上所得」の判断基準をどう考えるか
- 金融所得を保険料や利用者負担等に反映する在り方をどう考えるか
- 預貯金等の金融資産の把握・反映について、制度面・運用面をどう整理するか
- 補足給付に関する預貯金等の確認事務について、保険者の事務負担をどう軽減するか
「一定以上所得」の判断基準については、高齢者の生活実態や生活への影響、医療保険制度における給付と負担の見直し、 補足給付における預貯金等の確認事務などを踏まえ、検討を続ける内容として示されています。 また、金融所得・金融資産の反映についても、後期高齢者医療制度の対応状況などを踏まえ、 制度面・運用面から引き続き検討する方向です。
自治体担当者が確認しておきたいこと
- 負担割合や保険料に関係する制度変更の正式決定・施行時期
- 補足給付の申請・資産確認に係る事務負担や運用への影響
- 住民への説明や問い合わせ対応に必要となる情報の更新
5.要介護認定:審査会の簡素化対象を広げる案
資料2「要介護認定について」では、介護認定審査会の簡素化、がん等の疾病への対応、 在宅で生活する方の評価、認知症の方の評価などが取り上げられています。 自治体実務に特に関係する論点の一つが、介護認定審査会の簡素化対象の拡大です。
現行の簡素化条件では「前回認定の有効期間が12か月以上である」ことが条件の一つですが、 資料では、これを「6か月以上」に緩和する案が示されています。 厚生労働省の分析では、この条件を緩和した場合、新たに簡素化対象となる申請についても、 二次判定で要介護度が変更される割合は低い結果となっています。
あわせて、簡素化を実施していない保険者があることを踏まえ、簡素化が可能であることを改めて周知し、 簡素化条件に合致する申請のうち、実際に簡素化を実施した割合を自治体別に毎年公表する案も示されています。 いずれも資料上の検討事項であり、正式な取扱いは今後の情報を確認する必要があります。
自治体担当者が確認しておきたいこと
- 自保険者で介護認定審査会の簡素化を実施しているか
- 現行の簡素化条件に該当する申請数と、実際の実施状況
- 条件が見直された場合の事務フローや審査体制への影響
- 認定の迅速化に向けたデジタル化や、急激に状態が悪化する方への対応
6.介護支援専門員の法定研修はどう変わる?更新制の見直しと、研修の質の確保
令和8年10月26日の第137回社会保障審議会介護保険部会では、資料3 「介護支援専門員法定研修の見直しの検討状況について」が報告されました。 今回の論点は、介護支援専門員証の更新手続だけではありません。 研修に伴う時間的・経済的な負担を軽減しながら、ケアマネジャーが実践で必要な知識・技能を身につけ、 専門職としての資質を継続的に維持・向上できる研修の仕組みをどう整えるか、という点にあります。
まず押さえたいポイント
見直しの方向は、法定研修の受講を介護支援専門員証の有効期間更新と結び付ける仕組みを廃止する一方、 専門職として定期的に研修を受講することの重要性は維持する、というものです。 「更新制の廃止」と「研修そのものの廃止」は別です。 また、10月26日の資料は検討状況の報告であり、個々の変更内容や実施時期がすべて確定したという意味ではありません。
6-1.見直しの背景:受講負担の軽減と、実践に役立つ研修の両立
法定研修については、受講に必要な時間や費用が大きく、日々の利用者支援や事業所運営との両立が難しいことが課題として指摘されてきました。 研修のために現場を離れる時間や費用負担を軽減し、ケアマネジャーが利用者への支援に充てられる時間を確保することが重要です。
一方、負担軽減だけを目的に研修を簡略化すればよいわけではありません。 制度や地域資源の変化を理解することに加え、利用者の生活課題を把握し、本人の意向を踏まえて支援方針を組み立て、 多職種と連携しながらケアマネジメントを実践する力を高めることが求められます。 そのため、研修時間・受講方法の見直しと、研修内容・演習の質の確保をあわせて進めることが重要な論点となっています。
6-2.主な見直しの方向性
| 論点 | 資料で示されている方向性 | 実務上の着眼点 |
|---|---|---|
| 資格更新との関係 | 法定研修の受講を介護支援専門員証の有効期間更新の要件とする仕組みを廃止する方向 | 更新制の見直しと、継続的な学習の必要性を分けて理解する |
| 研修の受講方法 | 分割受講など、仕事や生活と両立しやすい柔軟な受講環境を整備する方向 | 受講しやすさだけでなく、学びを現場実践につなげる工夫が必要 |
| 研修時間・費用 | 可能な限り研修時間を縮減し、受講に伴う経済的・時間的負担を軽減する方向 | 短縮する場合も、必要な知識・技能や演習の質をどう確保するかが重要 |
| 研修内容の質 | 研修内容や実施方法を見直し、ケアマネジャーの資質の確保・向上につながる研修を目指す | 講義を受けるだけでなく、事例を通じた課題分析や相談援助技術の振り返りが大切 |
| 全国共通部分と地域性 | 全国統一的な実施が望ましい内容の国レベルでの作成と、地域の実情に応じた研修の組合せを検討 | 共通の基礎を確保しながら、地域の課題や社会資源を踏まえた学びを補う |
| 受講機会の確保 | 事業者・施設による研修受講への配慮や、受講機会の確保を進める方向 | 研修日程の調整、業務分担、研修時間の扱いなど、職場側の環境整備も欠かせない |
また、ケアマネジャーとして業務に従事していない期間がある場合や、再び業務に就く場合の研修の取扱いについても、 継続的な資質向上と復職のしやすさの両面から整理が進められています。 具体的な受講要件、研修時間、実施時期等は、今後の法令・通知や都道府県からの案内で確認する必要があります。
6-3.ケアプラン点検との関係:研修を「受講して終わり」にしない
この見直しは、自治体が実施するケアプラン点検や、ケアマネジャー向け研修会とも密接に関係します。 法定研修は、介護支援専門員として必要な知識・技能を身につけるための制度上の研修です。 一方、自治体のケアプラン点検は、個々のケアプランを確認し、利用者の自立支援や生活課題への対応、 サービス利用の妥当性などの観点から、ケアマネジメントの改善につなげる取組です。 両者は同じ制度ではありませんが、現場の課題を学びに結び付けることで相互に補完できます。
| 取組 | 主な役割 | 相互に生かせること |
|---|---|---|
| 法定研修 | 介護支援専門員として必要な知識・技能の習得、専門性の維持・向上 | ケアマネジメントの基本や事例検討の視点を、点検後の振り返りに生かす |
| 自治体のケアプラン点検 | 実際のケアプランを通じた課題把握、気づきの共有、改善支援 | 地域で繰り返し見られる課題を整理し、研修会で扱うテーマの根拠にする |
| 自治体のケアマネジャー研修会 | 地域の課題や制度動向に応じた学び、事例共有、多職種連携の促進 | 点検で得られた傾向を、地域のケアマネジャー全体の学習機会に広げる |
| 事業所内の実践・振り返り | 学んだ内容を個々の支援や事例検討に反映する | 研修後の実践状況を確認し、必要に応じて再研修や追加支援につなげる |
例えば、ケアプラン点検で「本人の意向や生活上の目標が十分に具体化されていない」 「サービス利用の理由と生活課題のつながりが見えにくい」 「福祉用具や各種サービスの必要性を説明する根拠が記録から読み取りにくい」といった傾向が見られた場合、 個別のケアプランへの助言だけで終わらせず、複数事例に共通する課題として整理できます。 そのうえで、地域のケアマネジャー研修会で事例検討や記録の振り返りを行い、 事業所での実践につなげる方法が考えられます。
ケアプラン点検で課題を把握
複数事例から傾向を分析
研修テーマ・事例を設定
研修・事例検討を実施
実践と再確認につなげる
大切なのは、ケアプラン点検を「指摘して終わる取組」にせず、地域に共通する課題を見つけ、 研修会や事業所内の実践を通じて改善を支え、その後の状況を確認することです。 点検結果を個人や事業所の評価だけに使うのではなく、地域全体のケアマネジメントの質を高めるための学習材料として活用する視点が重要です。
6-4.自治体の研修会は、法定研修を補完する地域の学びの場
自治体が開催するケアマネジャー研修会は、法定研修の代わりになるものではありません。 ただし、地域で実際に生じている課題や、制度改正に伴う実務上の疑問を取り上げ、 法定研修で学んだ知識を地域の支援に結び付ける場として活用できます。 地域の実情に応じてテーマを設定できることは、自治体主催の研修会の強みです。
- 制度改正への対応:報酬・基準・運用の変更点を整理し、ケアプラン作成や記録への影響を確認する
- ケアプラン点検で見えた課題:個人が特定されないよう配慮して事例を一般化し、課題分析や支援方針を検討する
- 自立支援・重度化防止:利用者の意向、生活目標、サービス利用の根拠が一貫しているかを振り返る
- 多職種・地域連携:医療、介護、障害福祉、地域資源との連携に関する地域課題を共有する
- 実践後のフォロー:研修後に事業所で実践した内容や困りごとを確認し、必要な追加支援につなげる
研修テーマは、担当者の経験や印象だけで決めるのではなく、ケアプラン点検の結果、給付実績、地域のサービス提供体制、 ケアマネジャーから寄せられる相談など、複数の情報を組み合わせて選ぶと、地域の実情に合った研修を企画しやすくなります。 その際、点検結果を個人・事業所が特定される形で共有しないことや、点検と研修の目的を明確に説明することも大切です。
6-5.自治体が今から整理しておきたいこと
- 国・都道府県から公表される法定研修の見直し内容、実施時期、経過措置を継続して確認する
- 地域のケアプラン点検で把握した課題を、個別助言と地域全体の研修テーマに分けて整理する
- 研修会の実施後、参加者の感想だけでなく、実践に役立った点や現場での変化も把握する
- 点検、研修、事業所での実践、再確認を一連の質向上サイクルとして設計する
- 法定研修と自治体独自の研修会の役割を明確にし、受講要件や制度上の取扱いを混同しない
なお、ここで示したケアプラン点検と自治体研修会の連携は、厚生労働省資料に新たな義務として定められたものではなく、 公表資料の方向性を踏まえた自治体実務への活用例です。 法定研修の具体的な制度変更については、今後の法令・通知や都道府県の案内を確認してください。
7.10月28日の介護給付費分科会:高齢者向け住まい・地域区分などを検討
令和8年10月28日の第272回社会保障審議会介護給付費分科会では、 令和9年度介護報酬改定に向けて「特定施設入居者生活介護」 「登録施設介護支援」「地域区分」が議題となりました。 あわせて、令和6年度介護報酬改定の効果検証・調査研究に関する 令和8年度調査の速報値も公表されています。
ここで紹介するのは、分科会で示された論点や対応案、調査の速報値です。 介護報酬の単位数・算定要件などが最終決定したことを示すものではありません。 今後の審議や正式な告示・通知を確認する必要があります。
7-1.特定施設入居者生活介護:自立支援と医療・認知症ケア
特定施設入居者生活介護については、認知症のある入居者への対応や、 排泄支援など自立支援に資するケアをさらに推進するための方策が論点となっています。 資料では、認知症日常生活自立度Ⅱ以上の入居者が約半数を占める一方、 認知症介護に関する研修修了者を配置している施設は一部にとどまることなどが示されています。
また、入居者ごとの排泄支援計画の作成・見直しや、排泄状態の改善を評価すること、 協力医療機関との連携体制を確実に構築することなども、これまでの議論を踏まえた検討事項です。 いずれも、資料に示された論点・対応案であり、最終的な報酬上の取扱いが決定したものではありません。
7-2.住宅型有料老人ホーム:ケアマネジメントの独立性と地域とのつながり
今回の資料で、ケアプラン点検や介護給付適正化の観点から特に注目したいのが、 登録制の対象となる有料老人ホームにおける「登録施設介護支援・登録施設介護予防支援」です。 資料では、介護支援専門員がホームから独立した立場を確保し、 入居者本人の意向や自立支援・重度化防止を踏まえたケアプランを作成できるよう、 運営基準や報酬のあり方が検討されています。
また、入居者がホーム内だけで生活が完結してしまわないよう、 地域資源の情報提供、地域活動への参加支援、関係機関との連絡調整などを行う 「地域生活相談」のあり方も論点です。 これは、介護サービスの利用状況だけでなく、本人の生活課題や地域とのつながりも含めて ケアマネジメントを考える必要性を示すものです。
自治体実務で確認したい視点
- 入居者本人の意向・生活課題と、ケアプランの目標やサービス内容が整合しているか
- ホーム側の意向に偏らず、介護支援専門員の独立性が確保されているか
- 地域資源や地域活動につながる支援が検討され、必要な記録が残されているか
- 住宅型有料老人ホームの入居者数・要介護度・給付状況を、自治体が把握できているか
なお、これらは第272回分科会で示された検討内容です。 登録施設介護支援の具体的な運営基準・報酬や施行時期については、 今後公表される資料や法令・通知で確認する必要があります。
7-3.地域区分:令和9年度以降の級地設定を検討
地域区分は、介護サービスにかかる人件費の地域差を介護報酬に反映する仕組みです。 今回の資料では、公務員の地域手当の見直しなどを踏まえ、 令和9年度以降の地域区分・級地設定をどのように考えるかが論点となっています。
市町村の意向確認結果や、級地の変更による事業所運営・人材確保・保険料等への影響を踏まえ、 地域の実情に配慮した制度設計や経過措置についても意見が示されています。 現時点で各自治体の新しい級地が確定したということではないため、 自治体・事業所は今後の正式な設定内容と移行措置を確認する必要があります。
7-4.調査速報値:医療連携と離島・中山間地域等のサービス提供
令和8年度調査の速報値として、高齢者施設等と医療機関の連携状況、 ならびに離島・中山間地域・豪雪地帯等における介護サービスの提供実態や 各種加算の活用状況などに関する資料が公表されました。 これらは、今後の介護報酬改定の検討に向けた基礎資料です。
離島・中山間地域等の調査では、サービス提供に必要な人員、移動距離・時間、 サービス提供件数、事業所の経営状況などを把握し、 地域の利用者に必要なサービスを安定して提供するための支援・評価のあり方を検討しています。 調査結果は速報値であるため、数値の解釈や制度への反映については今後の公表内容を確認しましょう。
厚生労働省「第272回社会保障審議会介護給付費分科会 資料(令和8年10月28日)」
8.自治体は「制度の動向」と「地域の実績」を並行して確認
制度改正の議論を実務に生かすためには、国の検討状況を追うだけでなく、 自治体自身が把握している認定状況、サービス利用状況、給付実績などを確認し、 地域の課題を整理しておくことも有効です。
例えば、サービス種類別の給付の推移や地域ごとの利用傾向を把握し、 ケアプラン点検で確認するテーマや対象の選定、介護給付適正化の取組に活用することが考えられます。 これは各審議会で決定された新たな義務を示すものではなく、 自治体実務への活用例です。
国の審議・通知を確認する
地域の給付・認定状況を把握する
課題と確認テーマを整理する
点検・適正化の取組に反映する
結果を確認し次の施策へつなげる
令和9年度に向けた制度改正は、今後の審議や正式な通知等によって内容が具体化していきます。 本記事では、国の公表情報を確認しながら、自治体担当者が実務上押さえておきたい情報を随時更新します。
11.まとめ|「制度対応」から「データに基づく地域づくり」へ
令和9年度以降の介護保険制度をめぐっては、 さまざまな制度改正が予定されています。
自治体担当者が押さえておきたい主なポイント
- 第10期介護保険事業(支援)計画における中長期的なサービス見込量の推計
- 中山間・人口減少地域における新しいサービス提供の仕組み
- 保険者機能強化に向けた評価の見直し
- 介護給付費財政調整交付金に関するデータ報告・年齢区分の見直し
- ケアマネジャーの更新制廃止と研修の見直し
- 有料老人ホームにおける利用者保護やケアマネジメントの適正化
これらを個別の制度変更として捉えるのではなく、 「地域の実情をデータで把握し、必要な施策を考え、 その効果を確認する」という大きな流れの中で捉えることが重要です。
介護保険制度を取り巻く環境が変化する中で、 自治体には、これまで以上に地域のデータを活用しながら、 介護サービスの提供体制やケアマネジメントの質を 考えていくことが求められます。
制度改正への対応だけではなく、
地域のデータやケアプラン点検から得られる気づきを、
今後の介護保険行政にどうつなげるか。
参考資料
本記事は、厚生労働省 「令和8年度 全国介護保険担当課長会議資料」 を主な参考資料として作成しています。
- 厚生労働省「令和8年度 全国介護保険担当課長会議資料」
- 資料1:総務課
- 資料2:介護保険指導室
- 資料3-1・資料3-2:介護保険計画課
- 資料4:高齢者支援課
- 資料5:認知症施策・地域介護推進課
- 資料6:老人保健課
- 第271回社会保障審議会介護給付費分科会(令和8年10月19日)資料
- 第272回社会保障審議会介護給付費分科会(令和8年10月28日)資料
- 第136回社会保障審議会介護保険部会(令和8年9月18日)資料
- 第136回社会保障審議会介護保険部会 議事録
- 第137回社会保障審議会介護保険部会 資料(令和8年10月26日)
- 第137回社会保障審議会介護保険部会 開催案内
※制度改正の具体的な施行時期、対象、運用等については、 今後公布される政省令、通知、介護報酬改定等の情報も確認する必要があります。
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株式会社hoodでは、自治体を対象に、 ケアプラン点検、介護給付適正化、介護保険給付分析、 研修等を通じて、地域の実情に応じた介護保険施策の検討を支援しています。