令和8年個人情報保護法改正|自治体の介護データ活用・
ケアプラン点検への影響を解説
令和8年に改正された個人情報保護法について、自治体の介護保険業務、 ケアプラン点検、介護給付分析、AI・データ活用の観点から、 実務上押さえておきたいポイントを解説します。
2026年(令和8年)7月、 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、 7月17日に公布されました。
今回の改正では、AIをはじめとするデジタル技術の進展を踏まえ、 個人情報を含むデータの適切な利活用を進める一方、 子どもの個人情報や顔特徴データ等の保護を強化し、 違法な個人情報の取扱いに対する実効性の確保を図る内容が盛り込まれています。
特に自治体にとっては、 「行政データの活用」「統計・分析」「AIの利用」と 「個人情報保護」をどのように両立させるか が重要なテーマとなります。
介護保険分野においても、介護給付データやケアプランに関する情報など、 個人情報を含むデータを扱う場面は多くあります。
本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成しています。 今後、政令・委員会規則・ガイドライン等の整備により、 実務上の取扱いが具体化・変更される可能性があります。
この記事のポイント
1.令和8年個人情報保護法改正とは?
令和8年4月7日に改正法案が国会へ提出され、 7月10日に成立、7月17日に公布されました。
今回の改正の背景には、AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展があります。
個人情報を含むデータについては、適切な保護が必要である一方、 統計分析やAI開発など、社会全体でデータを活用するニーズも高まっています。
改正の基本的な方向性
「個人の権利利益を適切に保護しながら、データの適正な利活用を促進する」 という方向性が今回の改正の大きなポイントです。
なお、改正法は原則として公布の日から起算して2年を超えない範囲内で 政令により定められる日に施行される予定です。
今後、政令、委員会規則、ガイドライン等の整備が進められることになります。
2.今回の改正で何が変わるのか
今回の改正では、さまざまな見直しが行われます。 自治体の実務に関係するものとして、特に注目したいポイントを整理します。
1.統計等の作成に利用する場合のデータ利活用を推進
今回の改正で特に注目されるのが、 統計情報等の作成を目的とした個人データの利用についてです。
一定の要件を満たす場合、 個人データ等を第三者に提供する場合や、 公開されている要配慮個人情報を取得する場合について、 統計情報等の作成のみに利用される場合には、 本人同意を不要とする仕組みが設けられます。
ここでいう「統計情報等」には、 統計作成等と整理できるAI開発等も含まれるとされています。
これは、個人情報を無制限に利用できるようにするものではありません。 改正法で定められた要件を満たし、 個人の権利利益を適切に保護することが前提となります。
2.子どもの個人情報について保護を強化
今回の改正では、16歳未満の者に関する個人情報についても見直しが行われます。
本人への通知や同意等について、 法定代理人を対象とすることを明確化するほか、 本人による利用停止等の請求についても一定の見直しが行われます。
また、16歳未満の者の個人情報を取り扱う際には、 その最善の利益を優先して考慮することが求められることになります。
3.顔特徴データ等の保護を強化
顔認識技術などに利用される顔特徴データ等についても、 保護が強化されます。
一定の場合において本人による利用停止等の請求をしやすくするほか、 オプトアウトによる第三者提供を禁止するなどの措置が講じられます。
4.個人情報漏えい時の対応を合理化
個人情報の漏えい等が発生した場合の本人通知についても、 一定の見直しが行われます。
本人の権利利益を侵害するおそれが少ない場合には、 本人への通知に関する規律が合理化されます。
漏えいした情報の内容や状況、 本人への影響などを踏まえて、 適切な対応を行うことが重要になります。
5.違法な個人情報利用に対する規律を強化
一方で、データ活用を促進するだけではありません。 違法な個人情報の取扱いに対する監督・罰則については、 むしろ強化されます。
- 個人情報データベース等の不正提供
- 加害目的による個人情報の提供
- 詐欺等による個人情報の不正取得
さらに、重大な違反行為によって財産的利益を得た場合等を対象として、 課徴金制度も導入されます。
「データを自由に使えるようになる」という改正ではありません。
適切なルールの下でデータ利活用を進めることが重要です。
3.自治体の介護保険業務にも関係する改正
ここからは、自治体の介護保険業務という視点で考えてみます。
介護保険行政では、日々さまざまなデータが蓄積されています。
- 要介護認定に関する情報
- 介護サービスの利用状況
- 介護給付費
- ケアプランに関する情報
- 住宅・家族等の生活状況
- 医療・介護に関する情報
- 地域別のサービス利用状況
これらの情報は、介護保険事業の運営や給付適正化、 地域の課題把握などに活用できる重要な行政資源です。
一方で、個人に関する情報を含むため、 適切な管理と利用が不可欠です。
介護保険分野で重要になる視点
「個人情報を守ること」と「行政データを活用すること」を どのように両立させるか
今回の法改正を契機として、 自治体が保有するデータを適切に分析し、 政策形成や行政サービスの改善につなげる視点が より重要になると考えられます。
4.ケアプラン点検への影響
ケアプラン点検では、利用者本人の生活状況や心身の状態、 家族状況、サービス利用状況など、 さまざまな情報を確認します。
そのため、ケアプラン点検においても、 「どの情報を、何の目的で利用するのか」 を明確にすることが重要です。
- 点検対象者の選定
- ケアプランの内容確認
- サービス利用状況の分析
- 給付状況との比較
- 地域別・事業所別の傾向分析
- 点検結果を踏まえた研修・支援
特に、個別の利用者情報を扱う業務と、 複数のデータを集計・分析して傾向を把握する業務では、 データの性質や取扱いを分けて考えることが重要です。
個別事例の確認
集計・分析
地域課題の把握
施策・支援
質の向上
5.介護給付分析では「データをどう活用するか」が重要になる
介護給付分析では、介護給付費やサービス利用状況などのデータを分析し、 地域の状況や課題を把握することができます。
- どのサービスの利用が多いのか
- 地域によってどのような違いがあるのか
- 要介護度とサービス利用の関係はどうなっているのか
- 給付費の増加要因は何か
- 今後どのような課題が予想されるのか
しかし、データ分析は単に「数字を見る」ことが目的ではありません。
介護給付分析
↓
地域課題の把握
↓
給付適正化
↓
ケアマネジメント支援
↓
質の向上
分析結果を具体的な施策につなげていくことが重要です。
6.AIを活用した介護データ分析にも注目
今回の改正では、統計作成等と整理できるAI開発等についても、 一定の条件の下でデータ利活用を促進する方向が示されています。
今後、自治体においてもAIを利用したデータ分析や業務支援が さらに進む可能性があります。
- 介護給付データの傾向分析
- 地域別の課題抽出
- ケアプラン点検対象の検討
- 介護サービス利用状況の分析
- 研修テーマの抽出
- 自治体内部の政策検討
ただし、 「AIにデータを入れれば分析できる」 という考え方では不十分です。
AI・データ活用で確認したいこと
どのデータを使うのか
↓
何の目的で使うのか
↓
誰が使うのか
↓
どのように管理するのか
↓
分析結果をどのように利用するのか
7.自治体が今から整理しておきたい5つのポイント
令和8年改正法の施行に向けて、 今後、政令・規則・ガイドライン等の具体的な内容を確認する必要があります。
1.何のためにデータを利用するのか
「分析するため」だけではなく、 何を明らかにし、その結果を何に活用するのか まで整理することが重要です。
2.個人単位の情報と集計・分析データを区別する
個人のケアプラン等を確認する場合と、 地域全体の傾向を分析する場合では、 データの性質や取扱いを分けて考える必要があります。
3.外部委託時の役割と責任を明確にする
自治体が外部事業者へデータ分析等を委託する場合には、 以下のような点を明確にしておくことが重要です。
- どのデータを渡すのか
- 何の目的で利用するのか
- 保管方法はどうするのか
- 再利用を認めるのか
- 分析後のデータをどう扱うのか
4.AIを利用する場合のルールを整理する
AIに個人情報を入力する場合には、 AIサービスの仕様やデータの保存・利用方法等も確認する必要があります。
AIだから問題があるということではなく、 個人情報をどのような仕組みで取り扱うのか を確認することが重要です。
5.分析結果を「政策」にどうつなげるか
最も重要なのはここです。 データ分析は、それ自体が目的ではありません。
介護給付分析
地域課題の把握
ケアプラン点検
フィードバック
研修・支援・質の向上
8.個人情報保護とデータ活用は「対立するもの」ではない
介護保険分野では、個人情報を扱う機会が多いため、 「個人情報だから分析できない」と考えてしまうことがあります。
しかし、重要なのは、 「できるか、できないか」だけではありません。
重要なのは「適切な方法で活用できるか」という視点
「どのような目的で、どのようなデータを、 どのような方法で利用すれば、 適切に活用できるのか」
今回の改正は、個人情報の保護を維持しながら、 統計・分析・AI等を含む適正なデータ利活用を進める方向を示しています。
自治体においても、今後は「情報を保管する」だけではなく、 「適切に活用して行政サービスの改善につなげる」という視点が 一層重要になると考えられます。
制度改正とケアプラン点検・介護給付適正化の関係
ケアプラン点検で得られた気づきを、 個別のケアプランだけで終わらせず、 地域全体の傾向として捉えることで、 介護保険施策の検討につなげられる可能性があります。
地域のデータを分析する
地域の課題を把握する
ケアプラン点検を行う
気づきを整理する
介護保険施策につなげる
9.まとめ|これからの自治体には「データを守る力」と「活用する力」の両方が必要
令和8年個人情報保護法改正では、 AIやデータ利活用の進展を踏まえ、 統計等の作成を目的とするデータ利用について一定の柔軟化が図られる一方、 子どもの個人情報や顔特徴データ等の保護、 違法な個人情報利用への対応は強化されます。
自治体の介護保険分野で重要になること
- 介護給付データやケアプランに関する情報を適切に管理する
- 個人情報を扱う業務と集計・分析業務を整理する
- データを地域の課題把握や給付適正化につなげる
- AI等を利用する場合のデータ取扱いを確認する
- 分析結果をケアマネジメントの質の向上につなげる
自治体の介護保険分野においても、 介護給付データやケアプランに関する情報などを適切に管理しながら、 地域の課題把握や給付適正化、 ケアマネジメントの質の向上につなげていくことが重要です。
これからの自治体には、 「個人情報を適切に守る力」 と同時に、 「保有するデータを適切に分析・活用する力」 の両方が求められるのではないでしょうか。
個人情報を守る。
データを適切に活用する。
そして、地域の介護・福祉行政につなげる。
参考資料
本記事は、個人情報保護委員会が公表している 令和8年改正個人情報保護法に関する資料を主な参考資料として作成しています。
- 個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」
- 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律
個人情報保護委員会|令和8年 改正個人情報保護法について →
※本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成しています。 今後、政令・委員会規則・ガイドライン等の整備により、 実務上の取扱いが具体化・変更される可能性があります。 実際の個人情報の取扱いについては、 最新の法令・ガイドライン等をご確認ください。
自治体の介護保険行政をデータと実務から支援します
株式会社hoodでは、自治体を対象として、 ケアプラン点検、介護給付適正化、介護保険給付分析、 研修会、福祉計画・調査等を通じ、 介護・福祉行政の実務を支援しています。
介護保険データの分析やケアプラン点検を 単独の業務として捉えるのではなく、 データから地域の課題を把握し、 具体的な施策やケアマネジメントの質の向上につなげること を重視しています。